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前田義昭という名の写真人の独白

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スミオのひとりごと.45 No.105

半ちゃんで撮ったちょっと怪しそうな場所
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 怪しそうなという意味は、ボクらが映画少年の頃に観たかつての日活映画の雰囲気がこの場所にあるからです。
 映画では必ず麻薬取引のシーンが出てきます。二本柳寛扮する悪党の親分と謎の中国人に扮した藤村有弘あたりが夜陰にまぎれて取引を行うのがこんな感じの場所で、朽ちかけた建物にいかにもそんな様子がありありです。欲の深い連中ですから取引がすんなり収まるわけがありません。子分も交えて両者の撃ち合いが始まります。そんな時、建物の陰から小林旭が出て来て悪者の正体を暴くのです。さらにその後、小林旭の仇敵とみられていた宍戸錠が、ぶっ放した銃口の煙を吹いて不敵な笑いを浮かべて現われてくるのです。助っ人だったと知って錠の本心を理解した旭は、二人して悪党を退治するのです。撃ち合いのシーンが何分か続き、クルマや船で逃げようとする二本柳寛と藤村有弘は二人に撃たれて死んでしまいます。ほどなくパトカーのサイレンが聞こえ、連れて浅丘ルリ子が駆けつけてきます。
 こんなことを書いていると、ついマルセ太郎の顔が浮かんできました。彼が一人で口演する「スクリーンのない映画館」は実際の映画よりも面白かったものです。錠が出てくる場面なんかを演じるところが目に浮かびます。映画の筋を訥弁雄弁を織り交ぜて語り、観客の想像力を最大限に刺激します。だからなまじっか映画そのものを観るよりも、迫ってくるものがあるのです。小さい頃、町内にミニ・マルセ太郎の一人や二人はいたはずです。自分が観て来た映画を実にうまく話す子供が。それを聞いただけで観たような気分になったものです。恐らくマルセ太郎も抜きん出た子供だったのでしようね。猪飼野あたりの、まだ舗装されていない道端で他の子供たちに喋っているランニング・シャツ姿の彼が想像できます。
 つまりマルセ太郎は映画を語っているかたちをとりながら、話術そのものをパフォーマンスしていたのではないでしょうか。彼自身の存在そのものが芸なのです。今テレビにでている人たちは、ビートたけしを除いて芸人といえる人は一人もいません。いつか一度、浅草でマルセとすれ違ったことがあります。後から知ったことですがその時すでにガンを患っていたのです。だいぶ瘠せていた感じでしたがあの風貌は健在でした。
 ついこの間も知人からエッセー集をいただき、そのなかでマルセ太郎に言及した号がありましたが、目の肥えた文章を読んで同好の士がいたことに意を強くしました。マルセと同じ高津高校出身と知り、なるほどと思ったのです。
 一枚の半ちゃん写真から希代の芸人マルセ太郎にとんでしまいましたが、これも写真力がなしうる業の一端なのかもしれません。         
                  (今回の撮影に使った半ちゃんカメラは、キャノン-デミ 28㍉ f2.8)
2012.2.1
by y-lu | 2012-02-01 11:16 | 半ちゃん写真 | Comments(0)