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前田義昭という名の写真人の独白

スミオのひとりごと.6 No.67

分身夏原悟朗

「夏原悟朗の日々」というタイトルの短い小説をブログで連載している。
 ご覧になった方もいらっしゃるかもしれない。小説だけではなく写真も入れて、自己スタイルの「写真+小説」形式で発表している。ジャズに愛着を持つ人たちが夏原の店に集い、彼等が織りなす会話を通して、ジャズ・レコードを紹介するという、ま、言ってみれば他愛無い作文だが。
 “当世時代遅れジャズ喫茶店主”と銘打っているので、店主夏原のキャラクターは大体お判りいただけるだろう。嘘は言えず曲がったことが嫌いな、文字どおり昔気質のジャズ喫茶店主だ。夏原はおおむねボク自身を投影しているが、勿論100パーセントではない。ボクと同世代の価値観を集約する人物と受け取ってもらってもかまわない。だから今の風潮からすれば、“当世時代遅れ”なのだ。
 その人物像を具体化するならば高倉健だ。健さんが映画で演じた役柄を思い浮かべてもらえれば、ほぼ想像してもらえるのではないだろうか。健さんに例えるとは、おこがましいとほとんどの方が思われるだろう。ボクが健さんのようだと言っているわけではないので、そのへんは誤解のないように。
 夏原のジャズ喫茶“サマーフィールド”は、芝浦の運河が交差した地点のすぐ脇にある。ブログを読んだ人が本当にあるのかと思って、探しに行ったという話もあるやなしや。勿論、実際にあるわけではないのでそう思っても、どうかそこで踏み止まっていただきたい。
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 そんな店だから毎日暇だ。四、五十年前のジャズ喫茶ならいざ知らず、立地条件も悪い夏原の店に通う客はごく限られた人たちだけだ。好きなジャズを仕事として聴けるのが、続けているたった一つの理由だ。自分一人と二匹の猫が、辛うじて食いつないでいる状況に変わりはない。
 いつまでもレコードばかりかけるのは止めて、ライヴをやったり食事を提供したりして今風の店に衣替えしてはどうかというお客もいるようだが、頑としていままでのスタイルを守り続ける夏原像を、ボクは貫いている。
 フリーターのヒゲ村、そしてスタイリストのスミちゃん、銀行員のマジ村、正体不明のカラヤン、アートディレクターの海雲堂、ヒゲ村の友人のヤッサン、学生の北見、獣医の山下、カメラマンの正木などが夏原の店の主な常連である。彼等は夏原を慕っているし、夏原も彼等を慕っている。彼等は今の店のスタイルが好きなのだ。だから夏原はそれを壊そうとは思わないし、そんな話には一切耳を貸さない。
 ここまで読むと、夏原というのはどこからみてもやはり高倉健的だなと、納得されるだろうか。ある日、この話が映像化される妄想がふくらんできた。当然、配役のイメージも具体的にふくらんできた。勿論夏原は高倉健以外になし。だから健さんにはここ当分、死んでもらっては困るのだ。夏原の年齢は六十過ぎだが、健さんは若く見えるのでいいだろう。八十歳になっても大丈夫だ。
 ヒゲ村のイメージは平田満がぴったりだが、フリーターとしてはちょっと歳をとりすぎているので、今の若手でさて誰がいいだろう。スミちゃんは桃井かおりで決まりだ。これもスミちゃんの年齢設定よりは大分歳をとっているが、健さんと同様、若く見えるのでいいだろう。あの巻き舌で喋る役柄にぴったりだ。後の人たちの役柄は皆さんに想像してもらうのもいいだろう。また、自分だったら夏原は誰がいいとか勝手にイメージしてもらうのもいい。
 何だか取りとめもない話に展開してしまったが、要はジャズ好きにはたまらないブログだと、自分で宣伝したかっただけ。

 こんな店ですが、一度訪ねてみようと思われた方はぜひ、夏原の店“サマーフィールド”へ。「夏原悟朗」で検索していただければですぐにでもご来店いただけます。

2009.11.4
 
 
by y-lu | 2009-11-04 16:46 | 仕事交差点 | Comments(0)